性病(STD)の感染経路を知って予防対策

口と性器のピリピリした痛みはヘルペス感染の疑いがあります

仕事の疲れが溜まってくると、口の周囲が赤くなって、かゆみや痛みを伴う水ぶくれができ、ただれたようになる―。このような経験をされた方は非常に多いと思います。軽症の場合、1週間から10日間もあれば、かさぶたができて自然に治るため、病名を自覚していないケースも少なくないようですが、これがウイルス性の伝染病「口唇ヘルペス」です。50~60%の人は感染し、ウイルスを保有しているとされているポピュラーな病気ですので、あまり心配する必要はありません。

再発が多い性病です

原因は単純ヘルペスウイルスの感染です。単純ヘルペスウイルスには1型と2型の2つがあり、従来は1型が口唇ヘルペスを、2型が性器ヘルペスを起こすといわれてきましたが、オーラルセックスが普及した近年は、1型が性器に感染する事例も増えており、1型と2型との差があいまいになりつつあります。

性器ヘルペスの場合、ウイルスに感染すると2~10日間の潜伏期間のあと、性器や肛門の周囲にヒリヒリとした痛みを感じるようになります。その後、小さな水泡がいくつもでき、やがて破れて潰瘍となります。発熱や倦怠感、足の付け根のリンパ節が腫れたりもします。特に女性の場合、排尿時に強い痛みが現れます。症状が全く現れず、知らない間に感染を拡大させていることもあります。

皮膚に水泡などの病変があるときは、セックス時にコンドームを着用していても、指で触れることで感染するリスクがあります。妊婦の場合、出生時が死亡率の高い「新生児ヘルペス」になることがあります。

性器ヘルペスが感染者のQOL(生活の質)を低下させる要因として、症状が治まってもウイルスは生涯にわたって体内に潜み続け、ストレスや疲労などで免疫力が落ちると、何度も再発を繰り返す点が挙げられます。根治はできないものの、発症時に抗ウイルス薬によって症状は大きく緩和できます。

免疫力が強いと感染しても自覚症状が出ないこともあり、自分では初感染と思っていたら、実は再発だったというケースも少なくありません。ヘルペスは初感染の時に病態が重症化しやすいので注意が必要なのですが、自分で初感染かどうかを判断することは難しいので、症状が出たら皮膚科を受診することが大切です。

特にアトピー性皮膚炎など、皮膚にトラブルがある人は重症化しやすい傾向にあります。口唇ヘルペスは市販の塗り薬でも治療が可能ですが、皮膚科で処方される飲み薬の方がより効果的です。

単純ヘルペスウイルスは粘膜接触で感染するので、症状が消えるまでは、ほかの人への感染に注意を払う必要があります。パートナーに移さないためには、ディープキスやオーラルセックスは勿論禁止ですし、タオルの共有、グラスや食器等の使い回しも避けるべきです。患部にはできるだけ触らないようにし、手洗いをこまめに行いましょう。新生児は免疫力が弱いため、口唇ヘルペスを発症しているときにほおずりやキスをするのはNGです。