性病(STD)の感染経路を知って予防対策

女性に多い性感染症(STD)の症状と治療

セックスによって移る病気のことを総称して「性感染症(STD)」といいます。以前は「性病」と呼ばれていました。これは性病予防法(現在は廃止)で決められた梅毒、淋病などを指していたのですが、セックスで感染する病気が増えたため、性感染症と呼んで広く解釈するようになったのです。

不妊症の原因となる病気も多い

近年は、オーラルセックス(フェラチオ、クンニリングス)などの類似性行為が多岐にわたるようになっており、それに比例して性感染症の患者も広がりを見せています。また、感染経路も、セックスそのものではなく、血液や唾液を介して感染したり、手指や口などから感染したり、妊娠中・出産時に感染するなど、さまざまなルートがあります。

以下に女性に関係が深い病気として、クラミジア感染症、淋病、梅毒、トリコモナス膣炎、カンジダ膣炎、ケジラミの症状と治療法を簡単にまとめてみました。

性器クラミジア感染症:女性はおりものの増加、軽い下腹部痛、進行すると子宮、卵管炎、腹膜炎などが現れますが、大半は初期段階の症状はありません。男性では排尿痛、排尿後の膿、進行すると副睾丸炎、慢性前立腺炎ななどが現れます。約半数は初めは無症状です。ジスロマックなどの抗生物質を投与して治療します。

淋病(淋菌感染症):女性ではおりものの増加、下腹部痛などが現れますが、自覚症状がないことも多いです。男性では女性よりも症状は現れやすく、排尿時に鋭い痛みがあったり、ペニスの先から膿が出ます。ロセフィン、ケニセフ、ノイセフ、トロビシンという抗生物質が投与されます。

梅毒:2015年は感染者が過去最高の2600人を突破し、大きなニュースとなりました。1期:性器・肛門・口などの感染部に、小豆大の痛みのない赤いしこりができますが、1か月前後で治ります。2期:全身の皮膚に赤い斑点が現れますが、2~6週間で消えます。大半はこの2期までに発見されます。

3期:無症状のまま数週間から数年の潜伏期になります。4期:皮膚や内臓の硬いしこり、関節炎、手足の麻痺、血管・脳障害などが現れ、死に至ります。治療はペニシリンを投与します。治療法が確立された近年は3期以降に進行することはほとんどありません。

トリコモナス膣炎:外陰部の強いかゆみ、泡を含んだ白や黄色のおりもの、性交痛などがあります。フラジールなどの抗原虫薬を膣内に挿入したり、内服します。

カンジダ膣炎:外陰部の我慢できないかゆみ、発赤、痛み、カッテーズチーズ状のボロボロしたおりものがでます。掻き毟ると傷口から雑菌が入って炎症が悪化します。抗真菌作用のあるエンペシド、フロリード、オキナゾールなどの膣錠や内服薬が処方されます。

ケジラミ:ケジラミが寄生した陰毛の毛根部の激しいかゆみがあります。ケジラミの排出物が下着に付着して、茶色いシミで発見することがあります。卵が孵化する時期にあわせてスミスリン(パウダーとシャンプー)で殺虫します。

性感染症の治療には、パートナー(夫や彼氏)の協力が欠かせません。女性だけが治療を受けて完治しても、病原菌を持ったパートナーとセックスをすれば、また移ってしまいます。このように相互に感染を繰り返することを「ピンポン感染」といいます。

性感染症の場合、女性が発病すると男性パートナーの浮気を疑ったりして、二人の関係に亀裂が入ることも珍しくありません。しかし、性感染症の中には膣カンジダ症のように健康な女性にも存在している「常在菌」によって引き起こされるものもあれば、潜伏期間が長いため、二人が付き合う前に実は感染していたことも十分あり得るのです。